「食育という言葉は聞いたことがあるけれど、具体的に何をするの?」といった疑問を抱えている親御さんは少なくありません。
この記事では、食育の意味や目的をわかりやすく解説するとともに、0歳から小学生までの年齢別の取り組みや、家庭で親子一緒にできる食育の例、取り入れる際のポイントをご紹介します。
「子どもにもっと食に興味を持ってほしい」「子どもと食について一緒に学びたい」と考えている方はぜひ参考にしてみてください。
食育とは
食育とは、食べ物や食事に関する知識を身につけ、自身で健康によい食事を選ぶ力を育てることです。
農林水産省は、食育を「生きる上での基本」であり、知育・徳育・体育の基礎となるものと位置づけています。また、さまざまな経験を通して「食」に関する知識と、健全な食生活を実践できる人を育てるものとしています。
つまり、食育は「食べること」について学び、よりよい食生活につなげていくための取り組みです。
子どもにとっては食材に触れたり、料理をしたり、食べ物について親子で話したりすることも食育の一つ。難しく考えすぎず、毎日の食事や生活の中で食に興味を持つことから始められます。
(参考資料)
農林水産省「「食育」とは」
食育で耳にする「3つの柱」「5つの力」「6つの視点」って?
食育について調べていると、「3つの柱」「5つの力」「6つの視点」などの言葉を目にすることがあります。
これらはそれぞれ別の食育を指しているわけではなく、食育をさまざまな角度から整理した考え方です。
どれも目的は同じですが、そこに至るまでの道筋を「どのような力を育てるか」「どのようなことを大切にするか」など、異なる切り口から整理しています。
ここでは、それぞれがどのような考え方なのかを、食育を初めて知る方にもわかりやすく紹介します。
食育の3つの柱とは?
食育の「3つの柱」は、食育を大きく3つのテーマに分けて捉える考え方の一つです。この3つのテーマは国が正式に定めているものではないため、提唱する人や自治体などによって内容が異なります。
代表的なのは、食育を「安全で健康な食べ物を選ぶ力」「衣食住の伝承」「食糧・環境問題」という3つの面から捉える考え方です。
この3つの柱は、食育の提唱・実践を続けてきた服部幸應氏が提唱している考え方です。服部氏は、1991年から「食育」を提唱・実践し、2005年の食育基本法の成立にも大きく関わった、食育の第一人者として知られています。
それぞれの内容は以下のとおりです。
| 3つの柱 | 内容 |
|---|---|
| 食べ物を選ぶ力 | 安全性や健康との関係などを考え、自分に必要な食べ物を選ぶ力 |
| 衣食住の伝承 | 家庭の食卓を通して、食事の作法や生活に関する知識、食文化などを次の世代へ伝えていくこと |
| 食料・環境問題 | 食べ物がどこから来るのか、食料を安定して確保するにはどうすればよいのか、食品ロスや環境への影響など、食を取り巻く社会や環境について考えること |
このように、3つの柱は栄養や食事だけにとどまらず、家庭、文化、社会、環境まで含めて食を考えるという広い視点を持っています。
(参考資料)
独立行政法人 農畜産業振興機構「【トップインタビュー】「食を育む~食育の3本の柱~」」
食育の5つの力とは?
食育の5つの力は、食育を通して子どもがどのような力を身につけていくのかという視点から整理したものです。日本食生活協会の「食育5つの力」を紹介した農林水産省の資料では、次の5つが挙げられています。
| 5つの力 | 内容 |
|---|---|
| 食べ物を選ぶ力 | 自分の健康や食事のバランスなどを考えて食べ物を選ぶ力 |
| 料理ができる力 | 食材を洗う・切る・盛り付けるなど、食事を自分で作る力 |
| 食べ物の味がわかる力 | 味だけでなく、香り、色、食感など、五感を使って食べ物を味わう力 |
| 食べ物のいのちを感じる力 | 食べ物が自然の恵みや、生産者など多くの人の手によって支えられていることを知り、食べ物を大切にする気持ちを育てる力 |
| 元気なからだがわかる力 | 食事や生活習慣と自分の身体との関係を知り、健康な身体をつくるために何が必要かを考える力 |
この5つの力は“子どもが毎日の生活の中で身につけていく力”として考えるとわかりやすいでしょう。
(参考資料)
農林水産省「2 食生活改善推進員の健康づくり活動の促進」
一般財団法人 日本食生活教会「全国食生活改善推進員協議会の活動」
食育の6つの視点とは?
「6つの視点」は、学校における食に関する指導で使われている考え方です。
文部科学省では、食育をより実践しやすくするため、「食に関する指導の目標」として示してきた6つの項目を「食育の視点」として整理しています。6つの視点は、次のとおりです。
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 食事の重要性 | 食事の大切さや、食べる喜び・楽しさを理解する |
| 心身の健康 | 健康な身体をつくるための栄養や食事について理解する |
| 食品を選択する能力 | 食品の品質や安全性などを知り、自分で選ぶ力を身につける |
| 感謝の心 | 食べ物や、それを生産する人などへの感謝の気持ちを持つ |
| 社会性 | 食事のマナーや、食事を通した人との関わりを身につける |
| 食文化 | 地域の食材や食文化、食に関する歴史などを知り、大切にする |
(参考資料)
文部科学省「学校における食育の推進」
「3つの柱」「5つの力」「6つの視点」はそれぞれ整理の仕方が異なりますが、食をさまざまな角度から考えるという点は共通しています。
なお、家庭で子どもと食育に取り組む際に、こうした考え方をすべて覚える必要はありません。まずは一緒に食事をする、食材について話す、料理をするなど、身近な「食」の体験を大切にすることから始めてみましょう。
食育は何歳からできる?年齢ごとにできる食育
食育は0歳から始められます。ただし、年齢によってできることや興味を持ちやすいことは異なるため、子どもの発達に合わせて無理なく取り入れることが大切です。
また、0歳から始められるとなると“食育=子どものためのもの”と考える方もいるかもしれませんが、大人にとっても食育は重要です。
ぜひパパママも食について学び、自分の食生活を見直したり、子どもと一緒に食について考えたりしてみましょう。
ここでは、0歳から小学生まで、年齢ごとにどのような食育ができるのかを大まかにご紹介します。
0~2歳ごろ
0~2歳ごろは、食べ物を五感で感じることから食育を始めやすい時期です。
例えば離乳食などを通して、さまざまな食材の味や香り、色、硬さなどに触れるといった食育ができます。
また、食材を見たり、触ったりすることも、食べ物への興味や関心につながります。
この時期は「食について教える」ことよりも、食べ物に親しみ、食事を楽しいと感じられる環境をつくることを大切にしましょう。
3~5歳ごろ
3~5歳ごろになると少しずつできることが増えてくるため、食事に関わる体験を大きく広げられます。
例えば料理の簡単なお手伝いや買い物など、食事ができるまでの過程に関わることで、食材や料理への興味を深めるきっかけになります。
「これは何の野菜?」「どんな料理になるかな?」など、親子で食べ物について話すことも食育の一つになるでしょう。
小学校低学年
小学校低学年からは、食べ物に関する知識を少しずつ深めていく食育がおすすめです。
食材の名前や特徴だけでなく、「いつが旬なのか」「どこで作られているのか」といったことも親子で話してみましょう。
また、小学校に入学すると給食を食育のきっかけにすることもできます。食事のマナーや配膳、盛り付け、食べ物を残さないことなど、給食で学んだことについて家庭で話してみるのもおすすめです。
さらに小学校2年生では、生活科の学習で野菜などを育てる活動を行う学校もあります。学校で植物を育てる経験をきっかけに、家庭でもプランターや家庭菜園で野菜を育ててみるのもよいでしょう。
このように、小学校では給食や授業を通して食について学ぶ機会が増えていきます。学校での経験を家庭での会話や体験につなげることも、子どもの食育を広げる方法の一つです。
小学校中学年以降
小学校中学年以降は、食について知るだけでなく、自分で考えたり調べたりする機会を増やしていくのがおすすめ。
例えば給食の献立を見ながら栄養について考えたり、地域の郷土料理や行事食について調べたりすることで、普段何気なく食べているものにもさまざまな背景があることに気づけます。
また、興味を持った食材や料理をテーマに、自由研究として取り組むのも一つの方法です。
野菜の産地を調べたり、食品の保存方法を比べたりするなど、「なぜ?」という疑問を自分で調べることも食育につながります。
この時期は親が答えを教えるだけでなく、子ども自身が考えたり調べたりすることを見守ることも大切です。成長に合わせて、食について学ぶ範囲を少しずつ広げていきましょう。
親子でチャレンジ!家庭でできる食育例
ここでは、家庭でできる食育例をいくつかご紹介します。
特別な教材や道具を用意する必要はなく、普段の生活の中ですぐに始められるので、ぜひ親子で楽しめそうなことから一つずつ取り入れてみてください。
食材を見たり触ったりする
最も実践しやすいのが、冷蔵庫の中にある食材を一緒に見たり、触ったりしてみること!
最初は料理をする前の野菜を親子で一緒に観察してみましょう。色や形、硬さ、香りなどに注目すると、普段食べているものにもさまざまな特徴があることに気づけます。
慣れてきたら、果物や豆類、きのこ類などもぜひ観察してみて。
一緒に買い物をする
スーパーなどへの買い物も、食育の機会になります。
小さいうちは「この食べ物の名前、なーんだ?」「これは○○っていうんだよ」など、食材名について会話するだけでOK。
少し大きくなったら、今度は子どもに食材を選んでもらいましょう。料理名から必要な食材を探してもらったり、新鮮な食べ物の見分け方を伝えて選んでもらったりするのもおすすめです。
一緒に料理をする
親子で一緒に料理をする時間も食育につながります。
料理ができるまでの過程を知ることで、食事がどのように作られているのかを学ぶきっかけになります。
また、「この野菜は切るとどうなるかな?」「焼いたら色や香りは変わるかな?」など、調理前後の変化を一緒に観察してみるのもよいでしょう。
食事の準備や片付けをする
食事の準備や片付けも食育の一つです。
箸や食器を並べる、自分が使った食器を片付けるなど、できることを任せてみましょう。
“食事=料理を食べること”というだけでなく、準備や片付けなども含まれていることを知る機会になります。
旬の食材について話す
普段の食事に旬の食材を取り入れ、季節について話してみるのもおすすめです。
「春はどんな野菜があるかな?」「秋になると何を食べる?」など、身近な食材から季節に目を向けてみましょう。旬を知ることで、食べ物と季節のつながりにも興味を持ちやすくなります。
野菜や植物を育てる
ベランダや庭などで、野菜や植物を育ててみるのも食育になります。
種や苗を育てることから最後に収穫するまでを体験することで、食べ物がどのように育つのかを身近に感じられます。
大きな家庭菜園を作る必要はなく、プランターなどで育てられる野菜から始めてもよいでしょう。
食べ物の絵本を読む
食べ物が登場する絵本を一緒に読むことも、手軽にできる食育です。
野菜や果物、料理などをテーマにした絵本を通して、食べ物への興味を広げられます。
読み終わった後に「この野菜、食べたことあるね」などと話せば、絵本の内容を実際の食事につなげることもできます。
季節の行事食を楽しむ
お正月のおせち料理や節分の豆、ひな祭りのちらし寿司など、季節の行事食を楽しむことも食育の一つです。
「どうしてこの料理を食べるのかな?」と由来を調べたり、料理に込められた意味を話したりすることで、食を通して日本の文化や季節の行事に触れる機会になります。
食育を家庭で取り入れるときのポイント
最後に、食育を家庭で取り入れるときに意識したいポイントをご紹介します。
「教える」よりも「一緒に体験する」
家庭で食育を取り入れる際は、子どもに知識を教えるだけでなく、親子で一緒に食について考えることを大切にしましょう。
親子で体験すると、子どもが感じたことや疑問をその場で言葉にしたり、親が新しい気づきを与えたりできます。
また、親が楽しそうに食材に触れたり料理をしたりする姿を見ることは、子どもが食に興味を持つきっかけにもなります。
子どもの「やってみたい」を大切にする
食育では、子どもが「やってみたい」と思ったことをできる範囲で体験させてあげることが大切です。
自分から興味を持って取り組むことで、食べ物や料理について知りたいという気持ちが生まれやすくなるからです。
また、自分でやってみたという経験は、食に関わることへの関心を広げるきっかけにもなります。
料理をしているときに「混ぜてみたい」と言われたら混ぜる作業を任せてみる、「野菜を育てたい」と言われたらプランター栽培を始めさせるなど、ぜひ子どもの興味を起点に食育を取り入れてみましょう。
無理に食べさせたり、正解を求めたりしない
食育では、子どもに無理をさせたり、「こうできるようにならなければ」と正解を求めすぎたりしないことも大切です。
食べ物の好みや興味の持ち方、できることには個人差があります。
食育を「好き嫌いをなくすための教育」や「正しい食生活を身につけさせるためのもの」と考えすぎると、子どもにとって食事が負担になることもあります。
すぐに結果を求めず、子どものペースで食に触れる機会を増やしていくことを意識しましょう。
親子で楽しむことを大切にする
家庭での食育は、親子で楽しみながら続けることを大切にしましょう。
食育は一度の体験ですべてを学ぶものではなく、日々の食事やさまざまな経験を積み重ねていくものです。
そのため、親が「きちんと食育をしなければ」と頑張りすぎると、長く続けることが難しくなってしまいます。
「今日は一緒に料理してみよう」「買い物をしながら食材について話してみよう」など、親子が楽しめることから取り入れてみましょう。
完璧に取り組む必要はありません。親子で食を楽しむ時間を少しずつ増やすことが、家庭での食育を続けることにつながります。
食育は毎日の「食べる」から始められる
食育とは、さまざまな体験を通して食に関する知識を身につけ、よりよい食生活につなげていく取り組みです。
食育になる経験はいくつもあり、親子で食材に触れたり、料理をしたりすることもその一つです。
大切なのは、子どもに一方的に教えるのではなく、親子で食について知り、考え、体験すること。まずは毎日の食事からでいいので、少しずつ食育を始めてみましょう。

